採算度外視の運賃

運賃安請けの限界

最近、社長のコラムで貸切貨物業界の運賃について言及しました。

このサイトを訪れるのは貸切貨物業界の人だけではないと思うので、一度運賃というものについてじっくりと情報発信したいと思います。

私たち運送取扱業の仕事は電話で始まり、電話で終わります。

他業界、特にIT業界の人たちから見れば「古っ」と思われると思いますが、ひたすら電話による商談です。

運んで欲しいという要件は「車いませんかの電話」としてかかってきますし、仕事を探していますという要件は「(運ぶ)荷物ないですかの電話」としてかかってきます。

通常はこの運賃を決めているのは一次元請けの運送会社であって、輸送案件に対して荷主が相見積をとり、これを勝ち抜いた企業の運賃が採用されます。

どんな業界でもそうですが、まとまった案件、例えば毎日何台かずつ出荷というような大口案件であれば、喉から手が出るほど欲しい仕事になるのだと思います。

何とかしてライバルに勝たなくてはならないのですが、他者との差別化が難しい貸切貨物業界。

どうしても値段勝負になってしまい、底値ギリギリから勝負が始まってしまうようです。

それでもなんとか利益が出るような運賃を提示するなら良いのですが、明らかに採算が合わない運賃を提示する業者もいます。

そういうことをする業者の戦略はこうです。

他社が絶対に提示できないような安い値段の運賃ですべての案件を請けてしまいます。

その案件すべてを自社対応してしまうと当然利益は出ませんし、赤字です。

しかし、他社のトラックを傭車として使ったらどうでしょう。

もらってくる運賃から手数料数パーセントはねて、下請けの傭車に出すので利益がでます。

下請けに出した分の利益で、自車対応したときの赤字が補填できるとは思いませんが、まるっきり赤字になるよりはマシです。

しかしこの戦略はそれだけでは終わりません。

傭車対応をするということは、業界全体にそこの出荷元の仕事は運賃が安いという評判がたちます。

そうするとその出荷元の仕事と聞いただけで手伝ってくれる傭車が離れていくような現象が生まれます。

いつぞやの記事でも書きましたが、物流量の需給バランスはすぐに逆転します。

需要過多になったとき、業者は安い運賃の出荷元から離れていきます。

運ぶ業者が選べない状況が生まれるのです。

ここで安請けする元請運送会社の次の作戦が発動します。

「今まではこの運賃で運んでいたけど、もう無理だ。だから値上げをお願いします。」

こうして、荷主は運んで欲しい書き入れ時に運ぶ業者がいなくて事業機会を損失したばかりか、輸送コストまで増加するという踏んだり蹴ったりな思いをすることになるのです。

このような「安かろう、悪かろう」が私たち貸切貨物業界にも存在します。

運賃に加味されない諸条件

納期を重視して大型トラック輸送を検討される荷主企業様にはぜひ知っておいてほしいと思うことがあります。

それは採算度外視の安い運賃など絶対に存在しないということです。

走る距離とトラックの減価償却費と人件費だけでも想像してみてください。

元請けで働くドライバーなのか、それとも傭車される下請けの運送会社なのか、どこかがその無責任な営業戦略のしわ寄せを受け、誰かが苦しむ結果しか待っていません。

さらに輸送に対して諸条件がついてくるのにも関わらず、輸送原価ギリギリなんてバカバカしくてやってられません。

貸切の大型トラック輸送っていうのは、最大積載量12t~13.8tぐらいの大型トラックを貸切って物を運ぶことです。

貸切って運んでもらうのだから、出来る限りその積載重量や積載スペースを有効活用してオーダーしたいところだと思います。

と、ここまではごく当たり前の話です。

しかし、荷主さんの要望はこれだけでは済みません。

そもそも荷主にとって、大型トラックを貸切り、長距離移動して運んでもらうメリットとは何でしょう。

大量に物を出荷したいという要望と安く済ませたいという要望を同時に叶えるのであれば、3PLのように拠点間の近距離をトラック輸送、長距離を貨物列車や船、保管に大容量倉庫、というオールインワンのサービスを使えば良いのだと思います。

ただ、この3PLにも弱点があります。

納期の問題です。

売れ残り不良在庫が出にくい商品であれば、どんどん生産し、どんどん大量出荷していけば良いのでしょうが、売れる数量を予測し、出来る限り在庫を増やさないように微調整しながら出荷したい荷主にとって、お客さんを待たさないようにする「納期」とは自分たちの差別化戦略にとって重要なファクターとなります。

この「納期」という条件を満たすことができるのが大型トラック輸送のメリットです。

そして同時にこれが運送会社が依頼を請け運賃を決める際、諸条件の一つになるはずなのですが、あまり運賃に加味されることはありません。

実際、運送会社の立場で考えていただければ、これがどれだけ大変なことなのかお分かりいただけると思います。

大型トラックの運行には法令で様々な条件がついています。

納期に必着条件をつけている上に、出荷から必着時間までが、法令で定められた運行時間ギリギリの案件とか普通に存在するのですが、これに法令を守って対応するのであれば、前の日の運行を止めて朝から準備しなければなりません。

前日の運行を止めるということはそのトラックの稼働日が一日減り、売上が上がらない日が一日できてしまうということです。

ただでさえギリギリの安い運賃で走っているのに、です。

だから私は納期に必着条件をつけたり、積込時間の指定をするということに対して、通常よりも高く運賃を設定されなければならないと思っています。

しかし、前述したようにこの条件が運賃に加味されて考えられることはほとんどありません。

また他にも、自主荷役とか手荷役(業界通称バラ積み)という諸条件もあります。

自主荷役とは積込や荷卸のときにトラックドライバーが先方のリフトを使ってトラックに荷物を積み込んだり、荷おろしを行うことです。

手荷役は総重量10tとか12tとかの荷物を手で積みつけていく作業のことを言います。

ドライバーが一人で一つ15kgのケースとかを600ケースとか700ケースとか積んだりします。

是非とも、この作業を真夏にすることを想像していただきたい。

どれだけ過酷であるのか想像できると思います。

上記のこの二つ。

よくよく考えてみると、運送会社のドライバーがやる仕事ではないですよね。

出荷元や荷卸し先の従業員がすべき業務です。

つまりは付帯サービスであるはず。

しかし、これもまた納期と同じで運賃に加味される条件とはなりません。

完全に無料サービスと化しています。

お金は業界を健全に回っているのか?

運送会社は無料で無茶な納期を引き受け、かつ安いサービス料金(運賃)で物を運ぶことで他社との差別化を図り、荷主は自社商品に〈納期の速さ〉というタグをつけ他社との差別化を図ってきました。

しかし、競争し続けていく内にこの無茶な納期で引き受けるのが常習化してしまい、運送会社も荷主も差別化することができなくなり、無料サービスの標準化という形でこの状況を受け入れざるをえなくなってしまいました。

以前はコンプライアンスに反し、このサービスを提供し続けた運送会社も昨今では経営が難しくなってきているのが事実。

でも当たり前になってしまった安い運賃は元に戻りません。

そして同様に当たり前になってしまった自主荷役や手荷役の無料提供も同じです。

これらの荷役料を別途請求したくてもできません。

それらの作業込みでギリギリの運賃を提示してしまったからです。

納期や荷役などを加味して、運賃値上げの交渉をもちかけると荷主は言います。

「運賃をこれ以上値上げされたら、ウチの商品原価が上がってしまう。それじゃあ、こちらもやっていかれない。」

おかしな話です。

そもそも荷役などは荷主がすべき業務であって、荷主が人件費を払って従業員にさせなければならない業務です。

そこで浮いた分の人件費分だけでも運賃に加算してもいいのではないかと思うのですが、それを支払うと「やっていかれない」なんて言わなければならない状態なら経営をやめるべきです。

しかし、こんな風に浮いた分の費用も、自分たちが一人勝ちするための利益としてであれば、健全にお金が廻ることはありませんが、その浮いた分の費用で積込のオートメーション化などの技術革新をしてくれたとしたらどうでしょう。

安く走らされ続けた運送会社も報われます。

私は今後業界は二つの選択肢のどちらかを選びながら前進していくものだと考えています。

〇一つは安い運賃で運び続ける運送会社によって生み出される荷主の利益が、輸送業界の技術革新に使われること。

〇もう一つは運送会社が適正運賃を提示することで得られる正当な利益を次世代輸送への技術革新に再投資すること。

利益を優先すべき会社経営において、どちらも難易度の高い選択であると思います。

それでもこれからの変化の時代を生き抜くためにはどちらかを選択していかなければなりません。

どうせなら、他力本願の一つ目の選択肢よりも、自分たちの努力で何とかできる二つ目の選択肢を選びたいものです。

さあ、業界全体で運賃の適正化に取り組み、健全なお金の回りで新しい時代に対応できる運送業界にしていきましょう。

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